実務ガイド · 金属・スクラップ

スクラップヤード許可制|改正廃棄物処理法で何が変わる?

2026年6月、スクラップヤードに国法による許可制を導入する改正廃棄物処理法が成立しました。ただし、すべてのヤードが今すぐ許可対象になったわけではありません。具体的な施行日、対象物品、規模要件、保管基準は今後の政省令で決まります。事業者は慌てて結論を出すより、自社の取扱物と作業内容を整理しておく段階です。

この記事のポイント
  • 国法によるヤード許可制は成立したが、具体的な施行日は未定
  • 対象物品・規模要件・保管基準は今後の政省令で決まる
  • 今は取扱物・作業・設備・既存許可を棚卸しする段階
金属スクラップを区画ごとに分けて保管するヤードを上空から見た様子
イメージ写真(AI生成)
STEP 01

30秒で現在地を確認

使用済みの金属・プラスチック物品を扱っていない場合は、新制度の対象外です。扱っていても、譲渡・再生のための保管や、切断・圧縮・破砕・選別・洗浄・再生を行わない場合は、取引内容を確認します。これらを行う場合は、許可対象になる可能性があります。対象物・面積・除外要件は、政省令の公表後に最終判断します。

取扱物、作業内容、政省令の対象要件の順に許可対象を確認する
対象物・面積・除外要件は未確定です。政省令公表後に最終判断します。
STEP 02

成立したことと、まだ決まっていないこと

正式名称は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律」です。2026年6月19日に法律第43号として公布されました。

施行日は、公布から2年6か月を超えない範囲で政令で定められます。つまり2028年12月19日より前に施行されますが、2026年7月29日時点で具体的な日は決まっていません。

「全国一律の許可制」という表現は、国が共通の法制度を作ったという意味では使えます。一方、許可を出し、立入検査などを行うのは都道府県知事等です。

決まったことこれから決まること
国法によるヤード許可制を導入する具体的な施行日
一定の保管・再生業を許可対象にする対象となる使用済み物品
保管・再生基準を設ける面積等の裾切り
帳簿、報告、立入検査等を設ける基準の具体的な数値
命令、停止、取消し、罰則を設ける申請様式・自治体の受付時期
STEP 03

なぜ廃棄物ではない物まで規制するのか

金属スクラップは値段が付くことがあります。有価物として取引され、廃棄物ではないと判断されれば、従来の廃棄物処理法による処理業許可の外側に置かれる場合がありました。

でも、物に値段が付いても、火災や油流出、騒音の危険が消えるわけではありません。

バッテリー、モーター、油を含む機械類や金属・プラスチックの混合物を大量に積み上げれば、周辺環境への影響が出ます。今回の改正は、有価物か廃棄物かという境界だけでは防げなかったヤードの環境問題を埋める制度です。

「値段が付くかどうかと、安全に保管できるかどうかは別です」

STEP 04

ヤードは実際にどれくらい増えている?

環境省の2025年度調査で、都道府県・政令市が把握している資源物の保管施設は4,625か所。前年度の3,260か所から1,365か所増えています。ただし、自治体の調査や把握が進んだ影響もあるため、1年間で42%新設されたという意味ではありません。自治体が把握できている範囲の数であり、全国の全事業場数でもありません。

生活環境上の問題は275件確認され、前年度から64件増えました。

環境省は、不十分な環境対策でコストを抑えた事業者が高値を提示し、適正事業者との間に不公平な競争が生まれる問題も指摘しています。

適正事業者は設備・防火・排水・分別・記録に費用をかけ、適正な買取価格を提示します。不適正事業者は必要な対策費を省き、一時的に高い買取価格を提示できる場合があります。

排出側から見れば、同じ金属なら高く売りたい。これは当然です。しかし、その高値がどこから出ているのかは確認した方がよいでしょう。

現場チェック
  • 騒音・振動
  • 火災
  • 悪臭
  • 油の流出
  • 水質・土壌汚染
  • 不適切な高積み
STEP 05

許可対象になり得る作業

新制度では、指定される使用済み金属・プラスチック物品について、次の行為を業として行う場合が対象になります。

単に物を売買するだけなのか、ヤードへ集めて選別・加工・保管するのかで扱いが変わります。

現場チェック
  • 譲渡のための保管
  • 再生のための保管
  • 切断
  • 圧縮
  • 破砕
  • 選別
  • 洗浄
  • 再生
STEP 06

全事業者が対象になるわけではない

法律や概要資料では、主に次の除外・特例が示されています。

面積要件や対象物の詳細が出る前に、「うちは対象」「小さいから対象外」と判断するのは早い段階です。

現場チェック
  • 政令で定める規模以下の事業場
  • 国や地方公共団体など、適正な取扱いが確実な者
  • 製鉄・精錬など、製品製造の工程として再生する事業
  • 一定の廃棄物処理業許可やリサイクル法上の認定等を持つ事業者へのみなし許可
STEP 07

ヤードに求められる基準

環境省の検討資料では、次の4つの領域が論点になっています(数値は政省令待ち)。

「許可申請の紙を作れば終わり」ではありません。敷地、設備、日々の受入れ方法まで変わる可能性があります。

領域検討されている内容
保管の基本囲い・フェンス、積み上げ高さや勾配、物品ごとの分別保管、事業場の掲示
危険物対応電池・油・モーター等の取り外し、火災の延焼を防ぐ離隔
環境対策不浸透性の床、排水溝・油水分離槽、騒音・振動対策
記録受入れ・搬出等の帳簿
STEP 08

違反にはどこまで強制力がある?

行政は報告徴収、立入検査、改善命令、措置命令、事業停止、許可取消しを行えるようになります。

無許可営業、不正な許可取得、事業停止命令違反などの重い違反には、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、またはその両方が科され得ます。法人には最大3億円の罰金規定があります。

法律上の手段は強いです。ただし、実際に不適正ヤードが減るかは、次に左右されます。

許可証を一枚増やすだけでは、現場は変わりません。見つけて、立ち入り、改善を確認するところまで制度が動くかが重要です。

現場チェック
  • 未把握ヤードを発見できるか
  • 立入検査を続ける人員があるか
  • 警察、消防、税関、環境部局が連携できるか
  • 名義貸しや無届営業を追えるか
  • 改善命令後の状態を確認できるか
STEP 09

中国系ヤードの増加をどう書くか

環境省調査では、施設が増えた理由として外国人所有・運営事業者の参入を挙げた自治体が多く、国籍では中国を挙げた回答が目立ちます。

一方、これは「中国系ヤードは違法」という統計ではありません。適正に営業する外国人事業者もいれば、日本人経営でも不適正なヤードはあり得ます。

問題にすべきなのは国籍ではなく、次の状態です。

国籍を主語にすると、制度が解決しようとしている問題がぼやけます。

現場チェック
  • 誰が営業しているか分からない
  • 保管物と搬出先を追えない
  • 火災・油流出対策がない
  • 周辺苦情が放置されている
  • 必要な許可・届出がない
  • 不適正な低コストで高値を提示する
STEP 10

スクラップ事業者が今から整理すること

政省令が出る前でも、次の棚卸しはできます。

今やるべきことは、許可が必要かを想像だけで決めることではありません。政省令が出たときに照合できる自社情報をそろえることです。

現在は取扱物・作業・設備・既存許可を棚卸しし、政省令公表後に対象物・規模・基準と照合します。自治体案内で申請時期・書類・事前相談を確認し、施行前に設備改修・申請・社内手順を完了します。

現場チェック
  • 各ヤードの所在地、面積、土地使用権原
  • 受け入れている物品と材質、電池・油・液体・モーターの分離方法
  • 廃棄物、有価物、古物、専ら物の区分
  • 保管(譲渡・再生のため)、切断、圧縮、破砕、選別等の作業
  • 既に持っている廃棄物処理業許可・認定と、自治体条例による現在の規制
  • フェンス、床、排水、防火、騒音対策
  • 受入れ・搬出記録と取引先
STEP 11

売り先は、実際どう選んでいるか

正直に書くと、僕自身は「高いけど、ここには売らない」と切った経験は多くありません。売り先は結局、価格と距離、回収の条件で選びます。それが現場の実態です。

そのうえで、信用できるかどうかは、ヤードの人と直接話して判断してきました。許可証を見せてもらう。その先の売り先を軽く聞いてみる。できれば工場やヤードを実際に見る。最後は人柄です。話してみて「この人は信用できるな」と思えるかどうか。

今回の改正は、この「会って、聞いて、見る」という昔ながらの確認を、許可・帳簿・保管基準という制度の言葉に置き換えたものだと理解しています。だから、施行後に増える確認項目も、特別なことではありません。

価格で選ぶこと自体は間違いではありません。価格と適正さを、別々に確認しておくことが会社を守ります。

現場チェック
  • 取引物が廃棄物か、有価物か
  • 専ら物として扱う根拠があるか
  • 現在必要な産廃許可、古物商、条例上の届出等があるか
  • 金属盗対策法の本人確認に対応しているか
  • 新制度施行後はヤード許可またはみなし許可があるか
  • 保管状態、防火、排水、電池・油の分離に問題がないか
  • 最終的な再生先・輸出先を説明できるか
STEP 12

スクラップヤードの許可制はもう始まっていますか?

いいえ。法律は2026年6月19日に公布されましたが、具体的な施行日は未定です。公布から2年6か月以内に政令で定められます。

STEP 13

小さなヤードも許可が必要ですか?

政令で定める規模以下の事業場は除外される予定ですが、具体的な面積等はまだ決まっていません。

STEP 14

産廃処理業の許可があれば、新しい許可は不要ですか?

一定の廃棄物処理業許可等について、対応範囲で許可を受けたものとみなす仕組みがあります。自社の許可内容と新制度の対象範囲を、政省令公表後に確認する必要があります。

STEP 15

金属業者から身分証を求められたのも、この改正の影響ですか?

主として銅くずの取引であれば、2026年6月に施行された別法「金属盗対策法」への対応と考えるのが自然です。

STEP 16

金属くずは専ら物だから許可不要ではありませんか?

専ら物と有価物、新しいヤード許可はそれぞれ別の論点です。くず鉄なら何でも無条件に許可不要になるわけではありません。専ら物の考え方は別記事で整理する予定です。

STEP 17

免責

本記事は2026年7月29日時点の公開情報に基づく一般的な説明です。対象物、規模、保管・再生基準、申請手続等は今後の政省令・自治体案内で具体化されます。最新の環境省・所管自治体の案内を確認してください。

PRIMARY SOURCES

一次情報・確認先

最終確認日:2026年7月30日
実務上の注意

個別案件の法的区分、許可の適合、受入可否、料金は地域と条件で異なります。所管行政、契約先、専門家へご確認ください。